落ち葉もすっかり落ちてしまったことで、柿の赤い実が日差しに映える12月になった。食べ物が豊富な人間は、柿の実などに関心を寄せなくなった。中山間部に限ったことではないが空き家が増え、手入れの行き届かない柿の木がたくさんある。農家ともなれば、家の敷地に2、3本、裏山に4、5本あるのは当たり前である。里に住む家人がたまに落ち葉履きにくるのはまだ良いほうで、年をとればとるほど疎遠になり、管理されなくなるのが自然である。テレビ番組「ポツンと一軒家」では、高齢者夫婦や一人暮らしの方が元気で家や土地を守っている姿が映されるが、これだって5年も経てばポツンと空き家になるのは必定と思う。

空き家の敷地にある柿の木(写真左)

まずくても柿を食べるクマ

さて、今年は、いや今年もというべきか、山の木々の実が凶作と報じられている。普段目にすることがない都市部でもクマの散歩がニュースで流れる。スーパーマーケットで射殺されたクマもいたっけ。私の住む旧八幡町でも10月末で13頭が捕獲されたと聞く。その中には9月に隣の家所有の栗林を荒らしたクマも入っている。我が家の敷地から5m離れたところにも栗の木が2本あり、10月には1.5㎏の栗を小母さんから貰い、栗ご飯を2回炊き、残りは渋皮煮にした。収穫前はクマが来ないか心配だったが、捕獲されたクマは河原の栗がお好みだったらしい。この栗畑では14年9月にも1頭捕獲されているので6年振りとなる。これでもう心配ないかと思っていたら、11月14日、近くの柿の木が折られるクマの食害が発生した。しっかりクマ棚を作り、食べていったのである。

2014年9月に捕獲されたクマ

他所でも被害が発生

この話を近所の人にすると、「安宝(山間の田畑あるところ)でも、柿が何本も枝を折られている」だの「クマが座って食べていた」だの、諸々話が出てくる。ウオーキングの時、川向うの集落の柿の木を注意深く見ると枝折れしているところが数か所ある。湯ノ台地域のブナは山形県では唯一平年並みの花をつけたとの調べだが、私が秋に山に入ってみたところでは、ブナの実、ドングリ、ブドウ、アケビ、サルナシなど皆凶作であった。つまりクマが冬眠前に食べるものが山にないのである。そこで仕方なく里に出没することになる。14年にはもう1頭、私の住む集落で捕まっている。このクマは籾摺り倉庫の脇に捨てた糠を食べに来た。幸い人との接触はなかったが、私の住む所ではクマとの共存が当たり前なのである。春、水芭蕉が食べられ、孟宗が何本も食い散らかされるのが毎年のことなた。

柿の木に作ったクマ棚

住宅密集地での対策

私の所は散居であるからまだ良いが、数百世帯が集まるところではそんな流暢なことを言ってはいられない。毎年秋になると柿畑にクマの目撃情報が寄せられ、檻の設置申請が出される。山と住宅の境に果樹がある麓地区、市条地区ではほぼ毎年これが繰り返される。今日、支所からの散歩の帰り道、麓地区の畑の中にある1本の柿の木が伐り倒されていた。ほかの場所の柿は矮性で剪定されているのだが、これには実がたくさん成っている。ということは管理されていない柿の木ということになる。人に言われたか、自主的か、知る由もないが、来年クマが登る心配はないことになる。さて、ここで心配なのは、クマが味を占めた我が集落の柿の木である。所有者は一昨年亡くなっているため伐ってもらうことも切り倒し了承も得られない。さて、どうしたものか・・・

住宅密集地の切り倒された柿の木
著者

わたるくん

1955年生れ 登山を頻繁に行うようになったのは退職後、地元の山岳会に入ってから。 2017年から2020年まで山形県自然公園管理員(鳥海国定公園)。

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