当初の計画では、徳島県剣山に登って、その日のうちに和歌山県高野山に入る予定であった。それが伯耆大山登山を延期したため、鳥取県からの移動は大変で高野山へ日没前に入ることが出来なくなった。高野山入りは大峯山下山後にすることにして、道の駅吉野路大塔に泊まるため向かったが、十分な駐車スペースを見つけられなかったのと、思った以上に脚が疲れており、楽なコースの大台ヶ原を先に登るため、川上村の道の駅杉の湯川上に入ったのである。夜10時に着き車中の寝床に潜り込む。翌5月24日、脚の疲労はまだ回復していなかった。前日のドライブは420㎞、登山時間は3時間半だが、64歳の年齢相応の蓄積した疲労があるのだろう。6時45分、国道169号通称東熊野街道を15㎞南下し、大台ヶ原ドライブウェイの山道を登り、広い大台ヶ原駐車場に着いたのは7時40分である。

大台ケ原ビジターセンター

ビジターセンター脇から入山

大台ヶ原は、日出ヶ岳を最高峰とし、正木嶺、大蛇嵓など標高1400~1600mの緩やかな起伏が続く高原台地である。東大台は気軽なハイキングコースとして人気だ。一方、入山に事前予約が必要な西大台は手つかずの自然が残る4時間ほどの周遊コースである。また、三重県側から日本三大渓谷のひとつで、滝や淵が連続する大杉谷をたどる1泊2日のロングコースが人気がある。その様子はNHKテレビ「にっぽんトレッキング100」で観たことがある。さて、駐車場が広すぎて登山口が分からない。ビジターセンターに行こうとしたら、東大台ヶ原登山口にぶつかったのは8時ちょうどである。砂利舗装された道をしばらく歩くと日出ヶ岳1.8㎞り標識があった。ほぼ等高線なりに歩みを進めること30分で正木嶺の展望台に着いた。展望デッキが整備されており、熊野灘や志摩半島を望むことができる。日出ヶ岳は奈良県と三重県の県境に位置しており、意外と海に近いのである。

正木嶺と日出ヶ岳の分岐。奥が日出ヶ岳山頂

展望台から大峯山脈を一望

しばし展望を楽しみ、展望台のある日出ヶ岳の木道階段を上る。8時40分、頂上の雰囲気ゼロの頂上台地に着く。三角点の脇に石が高さ1mほどに積み上げられ、ケルン状になっているが、展望台の高さに比べたらどうってことなく、3、4人いる登山者の誰も気に留めない。展望台に上がってみると、吉野熊野の山々の展望が素晴らしい。西には明日登る予定の弥山、八剣山など大峯山脈が連なっている。説明板に50余年前の大台ヶ原、苔むす樹林の写真がある。伊勢湾台風と鹿の食害により樹木のない笹原になってしまったという。さあ、正木ヶ原に下ろう。所どころに枯れた木の笹原に架けられた木道をゆっくり下りていく。正木ヶ原を過ぎ尾鷲辻から樹々の茂る中道を通って戻ることにする。10時5分、ビジターセンターを見学することにする。展示ホールを見て回り、入り口に戻るとここからの富士山の写真が掛けられていた。西の最遠展望地は和歌山県色川富士見峠の323㎞だが、大台ヶ原からだって272㎞とかなりなものである。

展望台脇のケルンと三角点

天川村で温泉、黒滝に泊まる

帰りは大峰山への道の下見をするために、新伯母峯トンネルをくぐり行者還トンネルを超えて天川村に向かうことにした。国道169号から天川村へ、国道309号に入りしばらく行くと、道が狭くなり崖下は沢の道を曲がりくねって進む。するとナビが空中を走るようになった。GPSの電波が届かないほど山が迫っているのだ。一本道でありながら行き先に不安を覚えながら進むと、行者還トンネル東口に出て安心した。このトンネルの西口が大峰山八経ヶ岳の登山口になるのである。駐車場のオープン時間を確かめ、天川村中心部に降りる。12時半過ぎ、天の川温泉に入り、パッとしない親子丼を食べる。高野山までの道は通行止めだったのであきらめることにした。そこでここから北にある道の駅吉野路黒滝に向かうことにした。コンビニを併設する道の駅で、喫茶コーナーもあるのでコーヒーとケーキを食べ、明日の登山用にパンと今日の夕食用のおにぎりを購入した。ここは国道から離れているので、昨夜の国道脇の杉の湯川上と違い安眠できそうである。午後8時前だが明日は土曜日でしかも晴れの予報である。早く登山口駐車場に入らないといけない。横になったらすぐ眠りに就いた。

大台ヶ原の台地は立ち枯れた樹木とミヤコザサ
著者

わたるくん

1955年生れ 登山を頻繁に行うようになったのは退職後、地元の山岳会に入ってから。 2017年から2020年まで山形県自然公園管理員(鳥海国定公園)。

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