北海道西部3座トレッキング後、2017年7月は自治会、コミュニティ振興会、退職者会の行事があり、かつ週末は雨の日が多かったため、遠くの山に登れなかった。迎えた8月、お盆の月は何となく行きづらい。地元旅行社の8月ツアーは魅力のツアーが目白押しで、槍ヶ岳、白馬三山、奥穂高岳、飯豊本山、八方尾根・唐松岳・五竜岳がラインナップしている。私は、昨年人数が集まらず流れた9月の『燕岳・大天井岳・常念岳ツアー』に申し込みしていた。ツアーが成立したと連絡が入り欣喜雀躍。長年登りたいと憧れていた常念岳に、9月1日から3日にかけ行けることになった。

1日目は中房温泉まで移動

9月1日午前7時30分に、バスターミナルまで妻から送ってもらった。もう1人の男性とバスに乗り込み、さらに3つの集合場所で客を拾い、計18人のツアーは長野に向け出発した。ツアー客は、妙齢の女性が多く、互いに知り合いで、私一人場違いな気がした。北陸道から上信越道、長野自動車道へ入った。長野自動車道から安曇野市の道の駅ほりかねの里まで雨模様は続き、念願の常念岳を拝むことは出来なかった。ほりかねの里でマイクロバスに乗り換え、標高1450mの中房温泉に着いたのは16時30分である。湯治場の雰囲気ある温泉で、何種類もの温泉がある宿である。たくさんの露天風呂があるが、あいにく雨が降っていたため、内湯の不老泉に入り温まった。夕食は旅館のものというより山小屋で出すようなもので、畳は黴臭く、布団は湿っており、20時前床に就いたがなかなか寝付けないまま、午前を回ってしまった。

中坊温泉本館

合戦尾根をゆるゆる登り、燕岳へ

ツアー2日目。まだほの暗い5時10分、湯原の湯の明かりを頼りに燕岳登山口に進む。ここでガイドさんを先頭に合戦尾根を登り、50分ほどで第一ベンチで休憩。6時35分第二ベンチに、7時28分第三ベンチに着き長めの休憩をとる。ここで明らかに登るペースが遅いことに気づく。ツアー登山は一人でも体調が思わしくないと、ガイドは遅い人のペースで歩くが、これは仕方のないことと理解している。ツアー客に息を切らしている人はいない。ガイドの登り方と休憩時間が異常にゆっくりなことが分かった。ガイドが遅すぎる。合戦小屋に着いたのは9時8分で、登山口からコースタイム3時間足らずのところを、4時間かけているのだ。スイカが名物の合戦小屋で休んでいるうちに登山者はどんどん増え、100人ほどになってきた。25分も休んで飽き飽きしたころようやく出発、合戦沢ノ頭の三角点でまた休む。一体何時間休むんだ、いらいらが募る。斜度を増していく花崗岩の登山道を、これ以上ゆっくり脚を交差させられないほどなので、かえって疲れる。登山者の間隔がどうしても詰まりながら登ると、霧が一気に晴れ、燕岳の頂が眼前に現れた。燕山荘はすぐだ。気分も上がってくる。燕山荘は北アルプスの中で最も美しい山小屋である。こげ茶色の丸太風づくりで、丸太の白い切り口、白い切妻壁のコントラストが見事である。リュックを小屋の前にデポし、燕岳に向け花崗岩の道をザクザクと歩む。イルカ岩やメガネ岩を探しながら11時35分、ついに燕岳山頂に立つ。槍ヶ岳、穂高岳は雲で見えないが、大天井までの縦走路は雲の切れ間に見え、武者震いが自然と起きる。帰りはわずかに花を残していたコマクサに挨拶して下りた。

急に晴れてきて、燕岳が見えた
白い花崗岩の道は異世界の道

雲海の上に槍ヶ岳から穂高岳

槍ヶ岳をバックに大天井岳にて

燕山荘で昼食休憩をとり、13時過ぎ大天井岳へ向け蛙岩(げえろいわ)まで九十九折の道を下る。稜線は安曇野市側つまり東側から雲が湧いてきて、段々西斜面にも霧が漂うようになった。晴れていれば前方にくっきり見えるはずの大天井岳や槍ヶ岳の眺望は雲の間から見えるだけ、ミヤマコゴメグサ、イワツメクサの白い花が私たちを慰めてくれる。青いロープが張られた稜線脇の登山道をゆっくり歩き、表銀座コースとの分岐まで登り坂を元気に登る。。15時50分過ぎ分岐の標識を左へ、大天井岳へガレ場の道を登る。相変わらず薄い霧がかかっている登山道を40分登り、大天荘に着いたのは16時35分のことである。小屋の前のテント場にはカラフルな30ものテントが張られてある。小屋に入る前に大天井岳に行くことにした。15分ほどで大天井岳山頂に着いた。天井沢には雲が広がっていたが、かろうじて2900mあたりから上が見え、槍ヶ岳から奥穂高岳までの岩稜が見ることができる。槍をバックに写真を撮ってもらい、20分以上滞在、名残惜しかったが大天荘に戻った。ただ、抜かれた三角点標石が岩のひとつと化していたことが残念であつた。

著者

わたるくん

1955年生れ 登山を頻繁に行うようになったのは退職後、地元の山岳会に入ってから。 2017年から2020年まで山形県自然公園管理員(鳥海国定公園)。

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