登山道で行き会う登山者の荷物を見ると、いつもより寝袋マットを括り付けている登山者が多い気がする。薬師岳からの下山時、すれ違う人の約3分の1はマット持ちだった。これは男女にかかわらず、どちらかというと若い人で、体力もあるので、多い気がする。今年は新型コロナの影響で、山小屋が定員の半分から3分の1程度に予約を減らし営業していることと、登山者自身が不特定の人と濃密接触を避ける意味もあるのだろう。仄聞するに、テント用品の売れ行きが例年以上のようだ。この際、テント泊に挑戦しようという人もいるだろうし、長い目で見ればお得という方もいよう。65歳の私でも、もう数年しか登山しないと思っているのに、テント用品のページを検索してしまうのだから。

食堂から薬師岳方面を見る

除菌に気を遣う山小屋スタッフ

8月末に薬師岳山荘に1泊した。27日に電話予約したところ泊まれるとの返事だった。名前と住所、電話番号を聞かれたあと、「マイシーツ」または「シュラフカバー」、「マスク」、「除菌スプレー」の持参を要望された。シュラフはあってもシュラフカバーはないので、家にあるベッド用のシーツで間に合わせることにした。モンベルのシュラフカバーを検索すると、キャンプシーツ1900円、レクタングラーシーツ2300円、ウオームアップシーツ4000円などがある。今年の登山で山小屋泊りは今回だけのつもりなで、購入はパスした。山小屋の受付する場に除菌スプレーがあり、食堂入り口にも、トイレ前にも置かれてある。部屋に上がるのに普段はスリッパを出しているのだろうが、スリッパ掛けにまとめられている。使われたら除菌する手間が半端ないためだろう。2階の大部屋C-1を寝床にあてがわれた。私の先に受付したおじさんはC-3であった。部屋に上がるとA-1、2に先客があり、正午過ぎにもかかわらず酒盛りをしている。枕元に縦60㎝横90㎝のフェンスが隣と隔てており、飛沫感染防止対策をとっている。昼飯としてうどんを注文したら、おかみさんがテーブルを消毒してくれた。ウィルス感染防止を徹底しようという姿勢がみられた。

定員削減で商売になるの?

薬師岳山荘は家族経営であるとホームページにある。主人夫婦と若の3人で切り盛りしている。小屋のblog日記をみると、雨の続いた7月初め、ヘリが飛ばないため、若が歩荷をし何度も往復したとある。また、コロナや悪天候への恨みなどおかみさんの愚痴が綴られている。ここの定員は60名とガイドブックにある。いまの部屋の床割をみると、16人入り大部屋が2部屋、5筒の個室で、全部で40名ほどになる。日曜日のこの日は14人の宿泊者であった。私たちの部屋は、男子10人、ほかの部屋に女子3人と男性1人が入っていたのだろう。このところ天気は良さそうなので、もう少し来てもよさそうなところであるが、定員の半分、30名を越えない予約受付なので、日曜日なこともありさらに半分の入りなのだろうか。折立までのバス運行は、9月から土日、祝日のみになる。縦走するにはタクシー利用が必須だ。おかみさんの愚痴はもっともである。

自粛は解除したはずなのだが

日本山岳会など山岳四団体は、4月20日、山岳スポーツ活動の自粛要請を行った。続いて。5月18日、都道府県をまたぐ登山の自粛要請とし、少し緩和した。続いて、5月26日、緊急事態宣言解除を受けて、100㎞圏内の県を跨がない登山、おおむね5人以内の少人数登山を推奨している。7月に入り、北アルプスの山小屋は営業を始めたが、コロナ第2波的増加もあったか、登山者の入りは登山自粛のままであるようだ。薬師岳山荘は10月中頃まで営業と謳っているが、電話をきいていると、客の入りが悪く10月は閉めるかもしれないと言っている。ここは10年前にリニューアルした建物で、返済金もあるかもしれない。ほかの山小屋はスタッフを雇い入れての運営のところが多いはずで、営業するだけ赤字ではやっていけない。コロナの完全終息はワクチンが国民に行きわたっての話である。秋の登山の行き先は大きく狭められるかもしれない。

三俣山荘、水晶小屋の休業期間のおしらせ
著者

わたるくん

1955年生れ 登山を頻繁に行うようになったのは退職後、地元の山岳会に入ってから。 2017年から2020年まで山形県自然公園管理員(鳥海国定公園)。

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