高山植物図鑑の索引を見ると、タ、ハ、ミの名前が多い。タはタカネキンポウゲなどのタカネ〇〇、ミはミヤマキンバイなどのミヤマ〇〇、そしてハはハクサンイチゲなどのハクサン〇〇と呼ばれる植物が多いからである。ハクサン〇〇は白山だけに咲く花ではなく、全国各地に咲いている花が多い。田中澄江は「花の百名山で、白山の花にミネズオウを上げている。御前峰と大汝峰との間のお池めぐりで、はじめてミネズオウを知った。この小さい花を咲かせるまでに、何年かかるのか、と書いている。

深田久弥は、「日本百名山」の中で白山について、生家の二階からも、小学校からも、川辺からも、海岸からも、つまり故郷のどこからもみえる山である。中学生の時初めて登り、雪のある山も初めてであった。白山登山は私の山岳開眼であった、と書いている。私たち鳥海山の麓の小学校でも、夏休み最初の土日に学校登山がある。成人してからたぶん登ることはまれであろうが、故郷の山を一度は登り、思い出にしてもらいたいとの親の故郷に暮らす人の思いからであろう。

2日目は別当出合から山頂まで

9月2日午前8時、春風旅館を出発して、標高差700mの狭い県道を標高1260mの別当出合まで登る。8時40分、吊り橋を渡り登山開始。中飯場を過ぎ、10時50分甚之助避難小屋着、10分休憩。30分かけて南竜道分岐に着く。もう1時間早く出たなら、南竜山荘へトラバースしてトンビ岩コースをたどれたのだが、今日のメンバーに疲れが見え始めた。十二曲りをひーこら登り、12時20分、2320mの黒ボコ岩で2回目の休憩となった。春風旅館に用意てもらった柔らかめのおにぎりを頬張る。登り始めから3時間40分、距離にして約4.3㎞、鳥海山より90m高い所に着いたことになる。ここまでくれば室堂まで急登はない。弥陀ヶ原を通り五葉坂を登れば白山室堂である。弥陀ヶ原で白山御前峰を背景に記念写真を撮り、午後1時15分室堂に着いた。

十二曲り手前の登山道
ビジターセンターと白山御前峰

明日の天気が不安、御前峰に登頂す

初夏はハクサンコザクラの大群落なのだが、ナナカマドの赤い実が私たちを出迎えてくれた。コザクラ荘5号室にリュックを下ろし、明日の天気が心配なため、今日のうちに御前峰に登ることにした。40分の登山で御前峰に登頂。白山比咩神社奥宮に参拝したころには、東から霧が押し寄せてきて辺りが見えなくなった。これではお池めぐりを楽しめないと判断し、早々に下山することになった。下山するとすぐ、室堂の食堂で800円のビールを飲む。美味し。1700円にしては慎ましい夕食を早食いして、宿泊棟に戻った。いつもならここでたっぷり晩酌タイムとなるのだが、前日の深酒と今日の6時間の登山の疲れか、7時前に70㎝の布団で就寝することにする。

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残念、御来光拝めず

朝、雲が切れ御前峰が現れる

早く寝たこともあり早起きが苦手な私も、4時過ぎ目が覚めた。H子さんはヘッドライトを付け御前峰に行ってみるという。私は小屋の東の灌木の道に出て、太陽が昇るのを待つ。4時55分東の空、山の端と雲の間が白くなってきたが、くっきり太陽が現れない。待つこと15分、太陽は上空の暑い雲に隠れてしまったようだ。H子さんも中腹まで登ったが御来光は拝めなかったという。残念だがこればかりは仕方がない。6時過ぎ、1100円にしては質素な朝食をいただく。朝食後荷物をまとめて、ビジターセンターの外のテーブルで御前峰を仰ぎ見ながら、会長の淹れた夜明けのコーヒーを馳走になる。下山路は、黒ボコ岩から白山(越前)禅定道をとることにした。殿ヶ池避難小屋で休憩をとり、眺めはいいが自然豊かな尾根道を下っていく。前々日、林西寺で見た仏像が泣く泣く下ろされた道をたどっていると考えると切なくなってくる。別当坂分岐で小休止をとり、最後の急な下りを経て別当出合に着いたのは、10時過ぎであった。下り約3時間。登山距離約11㎞、休憩1時間30分を含めた全行動時間は9時間30分であった。20㎞の県道を下り、白峰温泉総湯で2日分の汗を流す。9月3日午後9時、予定通り酒田に到着した。総移動距離1100㎞、62時間の大遠征は無事終了した。

著者

わたるくん

1955年生れ 登山を頻繁に行うようになったのは退職後、地元の山岳会に入ってから。 2017年から2020年まで山形県自然公園管理員(鳥海国定公園)。

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