ソロ登山で道迷いをしないこと以外に大切なことは、さまざまなトラブルの対処をいかにうまく行うかである。ソロ登山は、特に初めての山を計画するとき、地図の準備を入念にする。そして、登山口に立てば不安を振り払い、登山の道程では孤独に耐えて登る。そして常に、一人で安全に登り下りてこられるのかを心の奥に秘める。今回は山中でもしかして遭うかもしれないトラブルに対処するために、私が携行している装備品を紹介する。

トラブル対応グッズはひとまとめに

写真のビニール袋がエマ―ジェンシーキットが入っている袋である。リュックには衣類の上、雨具、食料の下に詰めている。中身は写真で分かるように、右上から、二つ目のヘッドランプ、テーピングテープ2種類、紐2本、ファーストエイドキット、右下から、コンパス、ハサミ、単3と単4乾電池、マッチ、ライターである。このほかに、ロックタイ(結束バンド)は雨蓋に、ツェルトはリュックの中に入れてある。ここで名前の挙がったものの中で使ったものはない。いや、他人のために使ったものとて、ロックタイがある。紹介しよう。2019年6月、瑞牆山から下山して天鳥川に下りる手前で登ってくる男性登山者から「テーピングテープがないか」と声をかけられた。持ってはいたが、リュックの奥にあるので、「ない」と答えた。どうしたのかと聞くと、「靴底が剥がれた」という。たまに登山道に靴底が落ちているのを見かけるが、初見の者に頼むなんてなんという図々しい男だろうか。そこで、雨蓋から20㎝の結束バンドをありったけ8本取り出し彼に与えた。彼は「ありがとう」とは言ったが「いくら」とは言わなかった。私も「百円になります」とは言えなかった。

ファーストエイドの中身は人それぞれ

ファーストエイドキットに準備するものは、その人の体調に合わせて備える必要がある。足に傷を作りやすければそれなりの、虫刺されが予想される山ではそれ対応という風にである。私の中身は、写真のとおりである。左上から、モーラステープ、バンテリンクリーム、虫刺され液、左中段から、芍薬甘草湯(ツムラの68番)、下痢止め(ストッパ)、風邪薬と胃腸薬と下痢止め、傷テープ各種、左下から蜂刺され用副腎皮質ホルモン軟膏、収縮包帯、カッター、爪切り、安全ピン、ガーゼである。この中でお世話になったものに、バンテリンと芍薬甘草湯、ストッパがある。芍薬甘草湯はご承知のとおり、急な足のつりを改善してくれる漢方薬である。長いアップダウンが続く道をあるくとき、2日目の縦走の時などに、足がつる予防として飲むことがある。50代後半で登った朝日岳で、大朝日小屋から大朝日岳の登りで両足がつってしまい、ズボンを脱いでバンテリンを塗りたくったことがある。このことを山岳会の仲間に話したところ、「俺は68番を飲んでいる」というではないか。68番とは芍薬甘草湯のことで、医師の処方でもらえるという。早速かかりつけ医に「足がつるのでください」とお願いし、薬を手に入れた。以来、時に愛用している。

下痢止めにはお世話になっている

薬のなかで一番頼りにしているのが、下痢止めである。山では〇〇水といったその山の湧き水を飲むことが多い。それで下痢になることもあるのだろうが、私の場合はもっと深刻である。なにしろ幼少のころからお腹がゆるいのである。したがって、朝、トイレで出しても、登山の途中またもよおすことがたまにある。そこでキュルキュルとくるとストッパを飲むのだが、それでも収まらないことがある。大天井岳から常念岳まで縦走中、北岳白根御池小屋までの途中、どうにも我慢がならず・・・・・・。ともあれ薬には使用期限があるので、家の常備薬の更新も忘れずに行い、ファーストエイド薬の入れ替えを行うことをお勧めする。

著者

わたるくん

1955年生れ 登山を頻繁に行うようになったのは退職後、地元の山岳会に入ってから。 2017年から2020年まで山形県自然公園管理員(鳥海国定公園)。

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