令和2年、湯ノ台口の登山シーズンは10月31日に一応の終わりとなった。晴天のこの日、土曜日とあって、前日の降雪にもかかわらず登山者が数人いた。そんな中、八幡山岳会は荒木沢に架かる橋桁を撤去した。滝ノ小屋閉めは18日に終っていて、登山届ボックスの撤去は先日八幡総合支所が行っていた。車道終点のトイレは同じく18日に終っており、山岳会の都合により10月最終日となったのである。山岳会は、橋桁を外した後、鶴間池小舎の雪囲いするためにカンスケ坂を鶴間池まで下り、一泊して今シーズンを酒と共に振り返えり、板で窓を塞ぐのである。前日の30日、麓に降った冷たい雨は山で雪になり車道終点で4、5㎝の積雪となっていた。河原宿では10㎝を超える雪だったと下りてきた登山者が言っていた。ただし鶴間池に雪はない。
鳥海山と山岳会のかかわり方は
春山というより、夏山シーズン、登山開きの少し前から八幡山岳会は鳥海山とかかわることになる。6月中旬、標高1200mの湯ノ台登山口はようやく除雪が終わり、車道終点まで車が入れる。それを待って八幡総合支所は登山届ボックスと案内板の設置を行うのだが、山岳会も橋桁設置を同日に行うことで大きい案内板の設置を手伝うのである。車道終点から荒木沢の橋まで15分登ると、ほとんどの年は橋げたがすっぽり雪に覆われている。日差しを浴びる表面は数㎝柔らかいが、5、60㎝は氷状になっているのでスコップの剣先は雪にささらない。チェーンソウの御出座しを願わなくてはならない。4つの橋脚をつなぐように雪渓をチェーンソウが切っていく。橋脚が現れると2枚一組の板を3か所計6枚渡し、抑え金具をボルトで絞めて固定するのだ。この作業が終われば、6月第4土曜日の山開き神事、鳥海登山になるのである。
20年はコロナ禍で登山中止
ところが今年は新型コロナの影響で神事は代表者のみの参加で行い、登山は中止になった。そこで6月28日日曜日に山岳会有志を頼んで、伏拝岳の標識の交換とアザミ坂下から小雪渓にかけてベンガラで歩行路を出す作業を行った。昨年夏の初めに根元から標識が折れ、石を寄せ集め立てていたものを新しいものと交換する作業である。若手に標識を背負ってもらい、スコップ、バール、ツルハシを各々分け持ち、河原宿、大雪渓、小雪渓、アザミ坂を登り伏拝岳に着いた。すぐに作業開始。標識を抜き、石を除け、ツルハシを振るったらあっけなく穴が掘れた。新しい標識を立て、埋め戻すまで30分もかからず終えることができた。下山し、アザミ坂下から0.5㎏のベンガラを5袋、小雪渓の端まで横断するようにラインを引いた。ここは霧が深くなると下山時まっすぐ下りていく登山者がいて、道迷い危険地点なのである。標識、ロープで右に横切るよう誘導してるつもりなのだが、年に何人かは迷子になる。一昨年は二人が遭難し、うち一人は未だ発見至らずなのだ。そこで試みとして、ベンガラのラインを引いたのである。
7月と9月に登山道の草刈り
山開きが終わると登山道の草刈りが7月の第1週土曜日に行われる。本来の麓の湯ノ台登山口から横堂まで、旅行村から横堂まで、荒木沢から鶴間池まで、車道終点から滝の小屋までの登山道の下草刈りである。1路線に2人から4人配置し行うのだが、最近は草刈り機を使うので細かい作業ができない悩みがある。理想としては1路線当たり草刈り機1台、下刈り鎌1丁、片付ける人1人というところか。これだと地面の下草も、胸高の笹も刈れて、刈りっぱなしで登山道に散らかさないので上出来の仕上がりになるのだが、現実は用具、人手の関係でそうはならないのである。今年は、横堂まで雪による倒木が4本あったので、そのうち登山道を塞いでいる3本をチェーンソウで伐り撤去することができた。S君は林業業者に勤務しているプロなので、慎重に作業して危険なこともなく終えることができてほっとしている。9月第1週土曜日も同様に2度目の草刈りを行う。
それ以外にも、荒れた登山道や崩れた沢で小規模なものは修復作業を行う。登山者の安全のためにできることを行うのが、山岳会の役目のひとつである。今年は、豪雨で草津川の上流部の沢が岩を流したため登山道が壊れてしまった。所詮人力頼みなので、重機を使ったように復旧出来ないが、梃子を使って石を並べる作業をすることができた。こんなことをするうちに、10月の下旬を迎え、一年が終わるのである。