8月26日の朝日新聞「やまがた版」に、特集『過ぎゆく夏』に「鳥海山山麓の滝」が掲載されていた。記事では「ジオサイト」になっている酒田市の「一ノ滝と二ノ滝」、「玉簾の滝」、「十二滝」、にかほ町の「元滝伏流水」を紹介している。そこで、思い出したことがある。それは「グレートトラバース3、日本三百名山」を実施中の田中陽希さん(以下「陽希」と親しみ込めていう。)がコロナで停滞中、飽海三名瀑を訪れていたことである。陽希は、鳥海山下山後、4月22日から7月17日まで酒田市小泉に一軒家を借りて自粛生活を送っていたことは、我々山岳会仲間では公然の秘密であった。陽希のブログによると、5月中に540㎞トレーニングランをしているのだが、その中で、手始めに26日に旧平田町の十二滝、28日は遊佐町の一ノ滝に、仕上げに31日に旧八幡町の玉簾の滝を訪れている。
十二滝まで往復40キロをラン
夏に滝を訪れ涼を求めることは定番の観光である。99.8%の人はエンジン付きの乗り物で(推定0.2%は自転車で)駐車場へ着き、ちょいと歩いて滝まで行くが、陽希は仮の宿から滝へランニングで行っている。ブログで大体の距離と時間を書いているが、私は車で調べてみた。十二滝まで国道、県道行くと21キロある。陽希は5月26日、『20キロを2時間弱で、2リットルの水分補給をし行った』と記している。十二滝は旧平田町の北俣地区、経ヶ蔵山(474m)ハイキングのゴール地点にもなっているが、ほとんどはの人は滝を見に来るだけであろう。駐車場から10分ほど相沢川沿いを歩き、斜面の道を河原に下りると滝はある。名のとおり12の滝の集合体で、最下部に左から合格、芯、河原の名がつけられている。陽希は片道20キロを走っているが、山間部を行くと片道17.4キロで行くことができることを今更ながらお知らせしよう。
二ノ滝を見せたかったぜ
2日後、陽希は遊佐町の一ノ滝を訪れる。ここへは距離17.1キロと短いが、最後の集落から約6キロを標高差330mの県道を幾度も曲がりながら、標高460mの駐車場まで走って登るにはかなりハードである。実際陽希は『一ノ滝まで1時間40分で行ったが、二ノ滝は体力を消耗していてあきらめた。帰りはジョギングペースでタラタラ家路へついた。』と記している。いやぁ、陽希くん残念。三ノ滝はともかく二ノ滝は行って欲しかった。君の脚ならあと10分歩けたはず。案内看板をよっく見たなら二ノ滝の飛沫を横から眺められたのに。そして、帰りの道で『胴腹瀧の水』を飲めば勇気凛凛で帰れたのに、うん~ん、残念。
高さ63mは圧巻の玉簾の滝
さらに3日後、大トリに相応しい旧八幡町の玉簾の滝を訪れている。小泉から日向地区の升田までは約12キロ、標高差200mである。ロードバイクの人たちが登りのトレーニングする県道でもある。玉簾の滝は、弘法大師が名付けたといわれ、直瀑する滝では山形県一の高さで、5月と8月にライトアップしている観光地でもある。今年の夏はコロナでライトアップを止めようか迷ったというが、2本ある道を帰りと行きに分けることで密を避け実施し、多い夜は1400人来たという。参道前に大型バスも入れる駐車場、そして前2滝にはない売店を整備し、お客さんを歓迎している滝である。幅5m、高さ63mからの水しぶきは見る者を圧倒して飽きさせない。陽希はこの滝から更に距離約7.5キロ、標高差300mを登り、18日間過ごした鳥海山荘に寄って、好物のカツ丼を食べ、風呂に入り、1時間昼寝をして、また汗だらけで15キロの道を帰っている。すごいよあんた。
鳥海山山麓のほかの滝
朝日新聞の記事では、秋田県側で「元滝伏流水」を取り上げているが、ここは滝というより沢沿いの山肌から伏流水が幅30mもドゥドゥと湧き出るのが凄く、川が崖になってる水が落ちる滝の概念をぶっ壊してくれる。地層云々となると「NHKのブラタモリ」になってしまうので触れないが、このほかに鳥海山山麓の有名な滝として、秋田県側、旧鳥海町の『法体の滝』、旧象潟町の『奈曽ノ白滝』を紹介しておこう。どちらもスケールの大きさでは全国区なのであるが、辺境の地東北の片田舎にあるため知られていない。そこで鳥海山を取り巻く2市2町では『鳥海山・飛島ジオパーク』事業を実施し、これらの自然を紹介することで観光客誘致に躍起になっているのである。最後に旧八幡町の「開運出世の滝、不動滝」を紹介しよう。ここは陽希もたぶん見ているはずだ。4月4日、鳥海山荘に入るとき、下黒川から県道をはずれ林道に入って300mの所にあったのだから。