2019年6月23日、日曜日の昼、広河原に着いた私たちは、12時20分に野呂川に架かる吊橋を渡り、登山を開始した。今日の日程は午後4時まで白根御池小屋に入ればいい。コースタイムは3時間、標高差約700mで危険個所はない。ただ雨が降らないかだけが心配である。今回のガイドさんは30代、前回の常念岳のツアーのガイドと違い足手まといになる心配はない。登ること30分で大樺沢との分岐に来た。広河原から北岳へは、御池小屋から草すべりを通るコースと御池小屋から東俣コースを通り八本歯のコルに行くコース、そしてこの分岐から大樺沢沿いに東俣に出るコースがある。朝一、健脚なら大樺沢・東俣間を日帰り出来ようが、私たちは高齢者が多いのと昼入りなので当然白根御池小屋泊まりということになる。
高山病の症状で30分停滞
分岐で7分間の休憩後、右に進路をとり山の斜面を登ると、一人遅れだす。20分登り、先頭は5分休憩し待つ。2時25分、ついに第二ベンチでダウンした。朝早い移動だったこと、急激な標高をバスで登ったこと、そして高齢なこと、寒いことなどで高山病になったようだ。リュックを下ろしベンチに寝かせ防寒具をかぶせて温める。27分後、空身でなんとか歩けるようになり出発する。もう一度休憩を入れ御池小屋には3時53分入りとなった。小屋前の広場から北岳を見やれば、雲が湧き立ち明日の天気は期待できそうにない。部屋に荷物を入れ、くつろいでいると、集合がかかる。明日の天気予報は午後雷雨のため、間ノ岳登山、北岳山荘泊りは中止にし、北岳登頂後御池小屋泊りとすることに決めたという。残念ではあるが、安全第一に従わざるを得ない。
山頂は風雨激しゅうして、のち雪
6月24日、4時20分起床、5時50分出発。風は弱いが薄い雲が立ち込めている。雨具を着こみ、小屋の右斜面雪渓に入り草すべりの九十九折を登る。途中、鳳凰三山が北東に望めた。小太郎尾根分岐手前まで来ると北岳とそれに続く間ノ岳までの稜線が姿を現し、感動する。ツアー前、軽アイゼン持参を告げられたが、雪渓は小さくキックステップも必要なく登れた。分岐からは仙丈ケ岳の頂きが顔を出す。皆カメラを取り出し思い出を収める。8時57分、肩ノ小屋に着く。トイレ休憩し、霧の中山頂までの岩場を登ること40分、9時55分北岳山頂に到着。案の定近くの岩場が見えるだけで、展望はまるできかない。しばし登頂の感慨に浸り、私は下山することにした。一部の人は、池山吊尾根分岐まで下りて、キタダケソウを見てきたそうである。その帰りを私たちは肩ノ小屋で食事をすることで待った。1時間後彼らが下りてきて休憩後の12時10分下山して、御池小屋に着いたのは午後2時20分であった。4時半ごろ、小屋に入り山岳会の仲間と一杯やっているとアラレが降り出し、外は一面真っ白になった。恐るべし山の天気。
北岳バットレスを観に大樺沢二俣へ
翌25日は朝から快晴である。そこで間ノ岳に行けなかった穴埋めとして、うれしいことに大樺沢二俣へ行くことになった。小屋から樹林のトラバース道を30分、八本歯のコルに延びる雪渓に出る。真正面に高低差600mの大岩壁、北岳バットレスが起立している。ここには標識があり、右俣、左俣の分岐となっている。しばし雪遊びを楽しみ、御池小屋に戻る。せっかく晴れたのに帰らなくてはならない。山岳会のM氏は「間ノ岳の登り損ねたからまた来なくては」と話す。全くその通りである。地元の友人は、白峰三山に2度来ているがいずれも北岳のみで帰っている。天候との相性で成果は左右されるのが自然相手の理であると改めて納得する。「来ただけ」Тシャツを買って広河原へ下った。その同じ時間に、NHK BS1のにっぽん百名山の取材で、萩原編集長と工藤夕貴が登っていたことを、テレビ放送で知った。残念。
アプローチが分かったから、今度は一人でも来れる。と思っていたら、2020年は新型コロナで南アルプスの山小屋は全部休業となった。広河原北沢峠間も不通である。4月から高齢者にコロナワクチン接種が始まるというので、期待大である。