折立から太郎平まで3時間45分で来たので、太郎平でゆっくり休憩することにした。私と折立から前後して登ってきた彼も少し遅れて着いた。山小屋前のテーブルには10人ほどが思い思いに休憩している。隣のお兄さんはラーメンの湯沸かしを始める。三分の一残っていた麦茶を飲み干し、小屋の水場で100円払ってペットボトルに水を詰める。東に目をやれば、鷲羽岳、三俣蓮華岳が、南には北ノ股岳が悠然と構えている。10時10分になった。折立からの彼は薬師沢小屋に行くと言っていた。ここでお別れである。軽く会釈して、二人は出発した。

薬師峠からの沢登りはきつい

木道を薬師岳方面に進むと、すぐに薬師峠キャンプ場に下る道になる。口が閉じられているテントが5張りほどある。薬師岳に登っているのだろう。←トイレ、水場の立て札があったので、小用を足すことにし、水場を見学した。斜面から地下水が流れ出ている。ここの水は只だった。100円惜しいことをした。気を取り直し、薬師平への沢登りの急登に向かう。地図上の計算では、690mの距離を176m上がる傾斜度10度と大したことないのであるが、なかなかどうして、岩が大きいし先が見えないのでなかなかきつい。30分悪戦苦闘して、薬師平の台地に着いた。

薬師峠からの沢登りの急登

薬師平からガレ場を登り山荘へ

薬師平は花畑を予想していたが、這松と草地で花は見当たらなかった。左旋回で木道を進み、薬師岳への斜面に取りつく。ガレ場の登山道を根気強く登る。見上げると稜線上に壊れた避難小屋がみえる。登山道に目をやれば、タテヤマリンドウ、エゾシオガマ、ヨツバシオガマらが慰めてくれる。登山者が下りてきたと思ったら、約3時間前に五光岩で追い抜かれたトレランの彼らだ。登るにつれ西斜面から雲が沸き上がってきた中、高度を上げると薬師岳山荘の姿が見え、11時55分とうちゃことなった。

薬師岳の避難小屋跡

晴れ間の登頂はラッキー

チェックインして荷物を2階に降ろす。霧が湧いたり晴れたり安定しないため、頂上に行こうか迷う。とりあえずうどんを注文し、食堂から山頂を眺める。一足先にチェックインしたおじさんが登っていく。晴れが安定してきたので、12時50分、ウエストバッグにカメラとスマホ、ゼリー飲料とウインドブレーカーを詰め、頂上を目指すことにした。愛知からの男性2人も一緒だ。25分登り避難小屋跡とケルンに着く。右斜面は中央カールが大きな弧を描いている。薬師岳の圏谷群は国の天然記念物に指定されているそうだ。さらに15分登って13時30分、薬師岳頂上に立ったときは、運よく晴れが広がっていた。五色ヶ原から縦走してきた女性に写真を撮ってもらった。石葺き屋根のガラス戸の祠の中には3体の薬師如来像が安置されていた。登山の無事と下山の無事を祈願し、20分ほど周りの山々の頂から雲が退散するのを、後から登ってきた夫婦と愛知の彼らとおしゃべりしながら待った。しかし、また霧が出てきたので、あきらめて山荘に戻った。

薬師岳山頂

三俣蓮華岳に思いをはせて下山

翌31日午前5時、早めに下山することにした。早朝は雲が切れ、ワリモ岳、鷲羽岳の右奥に槍ヶ岳、穂高岳連峰が見える。6時30分、太郎平小屋で朝パンを食べようとベンチに座ったら、小屋のスタッフがそんなに離れなくてもいいだろうくらい離れラジオ体操を始める。南東側から薬師岳を眺めるのはいつになるだろうか。雲ノ平、三俣蓮華岳を目に焼き付け、折立に下山したのは9時15分であった。

雲ノ平の奥に槍ヶ岳穂高連峰が
著者

わたるくん

1955年生れ 登山を頻繁に行うようになったのは退職後、地元の山岳会に入ってから。 2017年から2020年まで山形県自然公園管理員(鳥海国定公園)。

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