2017年7月7日10時に大雪山旭岳を下山し、まずは伯父さんに会うため250㎞北にある天塩郡豊富町に向かう。北海道の面積は83,456㎢と、東北と新潟県を合わせたほどの広さである。14の支庁に分かれ、豊富町は宗谷支庁(総合振興局)管内にあり、人口3800人の小さな町である。町の西部はサロベツ原野が広がり、日本最北の温泉郷「豊富温泉」が有名である。13300頭の乳牛を135の農家が飼育している酪農の町だ。道央自動車道で士別市まで行き、国道40号を北上し、最初の道の駅「もち米の里☆なよろ」に寄った。平日にもかかわらずお客さんかがいっぱいである。待つのがいやなので、隣のプレハブ小屋の蕎麦屋で500円の盛りを頼んだ。名寄からは天塩川沿いを走る国道40号を北上する。幌延町から稚内幌延線に入り、豊富温泉に着いたのは午後3時であった。

豊富温泉は原油を含む温泉
豊富温泉は、町営の温泉入浴施設で、一般入浴のほか湯治客用の浴場もある珍しい温泉である。それより珍しいのは、井戸から石油分が湧出するためわずかに油分を含んでいることだ。料金を払い浴場に向かうと油のにおいがする。黄濁した湯に確かに油が浮いている。乾癬やアトピー性皮膚炎に効果があるそうで、ある女性の方は遠くから通っているという。汗を流したのか油をまとったのかわからないが湯から上がり、同居する従兄と落ち合うため豊富駅に向かった。駅には、搾乳の時間が近いにもかかわらず、従兄夫婦が迎えに来てくれた。自宅に向かう前にサロベツ原野を案内してくれた。サロベツ原野は200㎢もある広大な高層湿原で、2005年ラムサール条約に登録されている。観光施設として、サロベツ湿原センターがあり、売店と食堂がある。木道が整備されており、利尻山が遠望できるのであるが、今日はというより、ほとんどの日霧が発生していて見られない。

母の葬儀以来31年ぶり、叔父に会う
センターから北に数㎞ある伯父さんの家は、住まいのそばに牛舎があり、約60頭を飼育している。以前はもっといたのだか、従兄夫婦が無理しないで飼える頭数に減らしたそうだ。搾乳している間、家の周りを見に外に出た。西側が灌木の林のほかは、多少のアップダウンはあるが、一面緑の牧草地が広がり果てしない。家に戻り、母の葬儀に来てくれた以来31年ぶりに会う伯父さんと四方山話をした。戦後ここに入植したころの話。協力し合って酪農に取り組んだこと。組合に掛け合って資金を出させたことなどなど。山形県庄内地方の入植者が集落をつくっているので、通称「庄内」と言われているそうだ。苦労して今があるが、入植して60年、二世が跡を継いでいるのは半分ほどで、従兄の子ども3人はそれぞれ独立し、酪農を継ぐ者はいない。自分たちの体が持つまで続けるが、それもあと5年くらいかという。搾乳作業が終わり、慌ただしく食事の時間が過ぎ、二階に寝床をとってもらい休んだ。

リュックを担いだ団体客であふれる
10時過ぎの船に乗るつもりで家を出たが、港の駐車場に着いてリュックに携帯が入っていないことに気づいた。てっきり家に忘れたと思い戻るがない。せっかく見送りに来てくれたのに申し訳ない。携帯に掛けてもらったら、別のバッグに入っていた。利尻渡航は夕方の便にし、その間ノシャップ岬、宗谷岬観光をした。稚内フェリーターミナルに入り待っていると、続々と団体客が列を作る。あわててその列に並ぶが、さらに続々と列が加わる。毎日日曜の私は、今日が土曜日であることを忘れていた。ハートランドフェリーは16時半出航、乗船後1時間で利尻岳が見えてきた。18時半下船、歩いて鴛泊港脇の旅館最北亭にチェックインし、夕食場所の居酒屋を案内された。頼んでいたメニューはホッケ焼き定食、唐揚げとビールを頼んで、最高にうまい夕食をいただいた。宿り戻る道はすっかり夜になり、港越しに月と利尻島が見え、明日の晴天と佳き登山を予感させた。
