去年の6月下旬、鳥海山湯ノ台口の山開き前、橋を架ける作業前の下見で荒木沢に来ていた時、男女二人の若者が通りかかった。この日はあいにくの雨模様で山頂まで行くには遅い時間であった。そこで、「どこまで行くの」と聞いた。できれば山頂まで行きたいという。初めての鳥海登山だというので、「霧の中薊坂から雪渓に下りるとき迷いやすいので注意するように」といったあと、「地図は持ってる?」と尋ねた。すると「持っていません」という。山をなめているなと思ったが、レインウェア、ヘッドライトは持っているというので、「気を付けて」と送り出した。「まったく、初めて登る山なのに、どうして地図の用意をしてないんだ。今時だからアプリか。アプリもいいが、地図も持とうぜ。」と心の中で文句を言った。20数分後彼らは戻ってきた。懸命な判断はできる人たちで良かった。
登山計画は雑誌やネットで
いまや登山の計画をするうえでネットは欠かせないツールである。大抵のことはネットで調べられるし、登山アプリを使えば、登山コース、現在地、通過地点などを教えてくれる。ほんと便利な世の中になったものだ。そんな時代でも、私は地図が好きだ。昭文社の『山と高原地図』はもちろんだが、読み物として地図を買う。百名山関係では、2002年4月初版発行のJTBるるぶ情報版『深田久弥の日本百名山』が最初である。しかし、残念なことに上巻しか買っていない。利尻山から後立山の劔岳、立山までの49座の掲載である。この時は槍や穂高の北アルプス、南アルプスから西日本の山には、私の技術では行けないと思っていたのだ。痛恨の極みである。時は過ぎ、2015年、定年退職し、これから山登りという時アルプスにも行きたいと思うようになってきた。でも、るるぶの下巻は廃版である。そんな中、一つの光明が射した。
昭文社のトレッキングコースガイド発売
2016年は図書館に勤めていた。新刊本が届いていたのを何気なく眺めていたら、昭文社の『日本百名山トレッキングコースガイド上・下』が目に入った。手に取る。開き眺める。コースデータ、プランニングガイド、カレンダー、コース上の写真、アクセスと料金、山小屋や日帰り温泉、宿、知りたいことが4ページに簡潔にまとめられている。これはいい。本を手にしながら、なじみの本屋に注文の電話を入れた。登山コースをまとめた雑誌以外に、『山と渓谷』や『PEAKS』、『SOTO』などを毎号ではないが買って、研究している。山と渓谷社の『空撮日本百名山』、成美堂出版の『鳥観図で楽しむ日本百名山』も時々眺めイメージトレーニングする。そんな夏の終わり、図書館事務室にJTBパブリッシングの『日本百名山登山地図帳上・下』が入った。昭文社のものより地図は詳しい。無論すぐに注文した。こうして私の本棚は登山関連の本で充実したのである。
地図は3種類プラス地形図
では実際の登山で持っていく地図はというと、そのほとんどを単独で行くので、万全を期すように準備する。『トレッキングコースガイド』と『登山地図帳』のコピー、昭文社の『山と高原地図』、加えて国土地理院の地形図(300m縮尺)の4種類である。『トレッキング-』は登山中のガイドとして使い、通過時刻を記入する。帰ってからそれを見ることにより、写真を撮った場所が推定できるのだ。ほかの3つの地図はジップケースに入れリュックに忍ばせ、万が一に備えている。だが、これまで大きく道迷いしたことがないので、取り出したことはない。百名山は標識もマーキングもしっかりしているところがほとんどなので、分岐や目標物を通過したとき、次のポイントまでの時間を覚えておくことで、道迷いのリスクは避けられる。特に分岐を通過するときは重要である。百名山といえども、必ず登山者がいるとは限らない。このように準備することで、リスクを軽減することが重要と考える。