前日、荒島岳を登ってから近江八幡市の安土城跡を見た後、琵琶湖の南淵を長浜市まで戻り、道の駅伊吹の里で車中泊した。2018年5月22日、午前5時に起き、ナビでは道の駅の向かいにあるはずのローソンはソーラーパネルになっていたため、朝飯のおにぎりも買えず伊吹山の登山口上野の集落に入った。伊吹山は、滋賀県と岐阜県の県境に連なる伊吹山地の南端に位置する山だ。かつては薬草の山として知られ、現在も花の百名山に数えられている。しかし、鹿の食害に悩ませられている山でもある。伊吹山ドライブウェイが山頂のすぐ近くまで伸びているため、百名山では美ヶ原に次いで容易に山頂に立てる山でもある。また、長浜市街地から見る伊吹山の左側はセメント鉱山の跡で、山としては見苦しいことになっている。
三合目まではスキー場跡を登る
伊吹山インフォーメーションセンター駐車場に車を止め、入山協力金300円をポストに入れ、登山口のゲートをくぐったのは6時10分である。道は階段の登りで、すぐに「歓迎伊吹山」の標識が迎えてくれる異例のスタートだ。九十九折の登山道を15分も歩くと、見通しの良いスキー場跡に出る。お店兼宿屋があるが朝早いので店は開けてない。宿泊客が体操をしている。ここが一合目で、二合目までは直線の緩い登りである。振り返ると米原や長浜の市街の向こうに琵琶湖が広がっている。二合目からは荒れた林道のようになった登山道を20分も進むと、原っぱから伊吹山の山頂が望めるところにでる。まもなくベンチのある三合目である。高山植物を守る鹿除けフェンスが張られている。ベンチで10分休憩して、だらだら登りを五合目まで登ると琵琶湖がかなり広がって見えるし、登ってきたなという感慨も出てくる。
広い頂上台地にヤマトタケル像
六合目の避難小屋、七合目の標識、そして八合目のベンチまでは、ガレ場の登山道をジクザクに折れ曲がりひたすら腿を上げ登る。頂上まで0.9㎞の看板に勇気をもらい、小休止し最後の急登に取りつく。8時30分、鹿除けゲートをくぐり、ついに山頂の台地に出た。山頂の山小屋を通り越し、伊吹山一等三角点に到着したのは8時35分のことである。登り2時間25分、台地の周囲の散策道を歩けば濃尾平野や伊勢湾などを眺められたのだろうが、ヤマトタケル像を写真に収め下山開始したのは8時52分である。なにせ今日のうちに彦根城と佐和山城跡を観なくてはならないのだ。10時40分、上野登山口に着いた。
鹿の食害に悩む伊吹、他人事でない
ビジターセンターが開いていて、300円ポストに入れたことを話すと、登山マップを渡してくれた。高山植物が鹿に食べられて無くなりつつあると嘆いていた。「でも黄色い花が一面咲いていましたけど」というと、「それはイブキガラシといって、鹿が好まない植物」とのこと。この原稿を書くにあたりネットを見ていたら、令和2年6月のレポートに「ほかの植物の後に入り込んで、大群落だったイブキガラシが少なくなった。鹿が食べるものが無くなって、まずくても食べざるを得ないのか」とあった。以前、伊吹山でイヌワシが鹿の子をつかんで飛んでいる写真をみて驚いたことがあった。登山中、鹿を見なかったが、注意深く見渡せばかなりの鹿を見れたのだろう。山形県にはこれまで野生の鹿はいなかったが、猪とともに発見例が県北部でも報告されている。もう四、五年で、熊、兎ばかりでなく、鹿、猪のジビエの恩恵に浴すのではと不安が募る昨今である。