2019年も7月になった。昨年日程と天気が合わなかった剱岳・立山トレッキングを行おうと、2泊3日の剱岳山行プランをI氏に届け、来週にでも行こうと約束したが、5日になって天気が悪い予報が出たので延期を告げた。さて、ソロでどこに行こうか。近くて手軽な山2座となると、巻機山と苗場山が浮かんだ。巻機山は妹の夫の故郷、旧塩沢町から入山する山であり、数年前お葬式に伺った時、「次は巻機山に登りに来ますよ」と言ったものだ。巻機山には清水集落から登るのが一般的である。清水といえば、上越線の清水トンネル、新清水トンネル、新幹線の大清水トンネルが群馬県水上町と新潟県湯沢町間を通っているが、それより以前、水上町土合と旧塩沢町清水との間は清水峠を越えて明治の時代に街道がつけられた。完成してまもなく雪崩で廃道となったが、今でも地図上では国道291号として破線でつながっている。

ニセ巻機から見る巻機山の稜線

桜坂から井戸尾根に入る

7月9日夕方に愛車フリードで南魚沼市に出発した。今日は大和PAで車中泊である。翌日5時に大和PAを出て六日町ICから国道291号に下り清水集落に入る。清水バス停から林道に入り桜坂駐車場に着いたのは5時30分である。すでに駐車場の管理員がいたので料金500円を支払い、登山開始したのは6時ちょうどである。ここからは登山ルートが二つあるが、ヌクビ沢ルートは下山禁止と危険な道なため、安全な井戸尾根コースを採用する。林道をたどりしばらく行くと井戸の壁と言われる急坂が現れる。ブナ林の急坂をひたすら登ると45分で五合目に着いた。5分休憩してSOYJOYを一本食べる。赤土で滑る道を30分ほど登り、六合目の展望台に着くと、雪渓に覆われたヌクビ沢と深緑色の割引岳がきれいに見える。さらに標高を上げ登山開始から2時間になろうとしている七合目で朝食休憩をとる。方向が今ひとつ分からないが反対側の山の斜面にスキー場のゲレンデが広がっている。

雪渓のヌクビ沢と右に割引岳

ニセ巻機を越え山頂ケルンへ

低木と笹に覆われた井戸尾根の階段状の登山道をひたすら登る。やがて目の前に巻機山の山頂部が現れると前巻機山(ニセ巻機)だ。石原に九合目とニセ巻機山と書かれた2本の柱が立っている。ここからは所どころ雪の残る斜面の上に、御機屋から頂上、牛ヶ岳の平らな稜線がきれいである。いったん避難小屋へ60m下り、130m登り返すと標高1930mの御機屋の分岐に着く。ここには巻機山頂上1967mの立派な標柱がある。そのほかにも頭を混乱させる無駄に多い標識があるのだが、無視して牛ヶ岳へ延びる緩やかな斜面の道を5分も歩けば、巻機山最高地点の山頂ケルン1967mに着く。誰が立てたか枯れ枝が高さ7、80㎝ほどケルンのてっぺんに挿してある。たぶん百名山で頂上と表示のない頂上はここだけだろう。それはそれで味があるというものだ。だが、深田久弥の日本百名山の巻機山の篇では、巻機山の標高は1960mとあるのだから、どこが頂上なか不明である。振り返りニセ巻機山を見れば、その彼方に苗場山が見えてもよさそうなのだが、どれだかはっきりしない。

井戸尾根分岐の御機屋
巻機山頂上ケルン、その彼方に割引岳

道の駅南魚沼で寛ぎ、苗場山へ

記念撮影後すぐに下山し、正午前に桜坂登山口に着いた。民宿上田屋の山菜そばを楽しみに寄ったところ残念ながら休みであった。塩沢まで戻り、とん吉でとんかつ定食を食べ、道の駅南魚沼に立ち寄った。ここは道の駅としては規模が大きく、産直、レストラン、インフォーメーションのほかに、診療所、美術館が併設されている施設だった。いつものようにソフトクリームを注文し、車につけている折りたたみいすを木陰に据えて、半分眠っていもいい気分で本読みをする。5時近くになったのでコンビニに寄り、晩飯と明日の朝食を買い、苗場山登山口に向かう。午後6時20分駐車場到着。これから車中泊の中年男性一人と下山して着替えている若者二人がいた。若者に聞くと、ともに24歳で午後1時ころ登り、6時過ぎに下りたという。コースタイム8時間のところを5時間ほどで駆けたことになる。鳥海山湯ノ台口滝ノ小屋で午後から登る人には「どこまで行くの」と声を掛けるようにしているが、若ければコースタイムの6割で登ることは可能なのである。

著者

わたるくん

1955年生れ 登山を頻繁に行うようになったのは退職後、地元の山岳会に入ってから。 2017年から2020年まで山形県自然公園管理員(鳥海国定公園)。

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